当店の焙煎について
焙煎とは、豆の個性を翻訳する仕事だと考えています。
コーヒー豆には、それぞれ生まれた土地があります。
標高
気候
土壌
栽培方法
そして、生産者の想い。
それらのすべてが、一粒一粒に刻まれています。
私たちが目指しているのは、
その背景にある個性を、できる限りそのまま一杯の中へ届けること。
けれど、ただ個性が強ければよいとは考えていません。
どれほど優れた豆でも、飲みにくければ日常には根づかない。
だから私たちは、
「豆の個性を鮮やかに表現しながら、日本人の味覚に自然になじみ、ご家庭でも美味しく再現しやすいこと」
この両立を目指して、焙煎を進化させ続けています。
焙煎の原点

すべては、一杯の衝撃から始まりました。
まだ会社員だった頃。
純粋にコーヒーが好きで、自宅で手回し焙煎を始めたのが
最初でした。
しかし当時は、今のように焙煎に関する情報が簡単に
手に入る時代ではありません。
何度焼いても、思うような味にならない。
「本当に美味しい焙煎とは何だろう」
そう思い、全国の焙煎店から豆を取り寄せました。
その中で、ひときわ印象に残る一杯に出会います。
驚くほどまろやかで、雑味がなく、最後まで心地よく飲める
コーヒー。
その味を生み出していたのが、完全熱風式焙煎機による
究極の焙煎術だったのです。
私はその技術に魅了され、師匠のもとで約1年間焙煎を
学び、自家焙煎コーヒー店を開業しました。
ここが、私たちの焙煎の原点です。h
第1段階
究極の焙煎術
開業以来、およそ10年以上続けた焙煎メソッドです。
温度をゆるやかに上げながら、じっくり時間をかけて火を入れることで、
口当たりがやわらかく、
まろやかで飲みやすいコーヒー
を実現してきました。
師匠から学んだこの焙煎は、今でもわたしのコーヒーづくりの土台です。
そしてこの確かな基礎があったからこそ、
新たな可能性への探求を始めることができました。
第2段階

50℃洗い&スチーム焙煎
開業15年目の2024年。
ある喫茶店向けのオリジナル豆を開発していた際、
「50℃洗い」という手法との出会いがありました。
その可能性に惹かれ、開発の方向性を大きく転換。
しかし、水分を多く含んだ生豆の焙煎は非常に難しく、
最初は雑味や渋みのある失敗の連続でした。
そこから数か月にわたり、
焙煎温度、排気、熱の伝え方を一から見直しました。
そして完成したのが、
50℃洗いとスチーム焙煎を組み合わせた独自メソッド
です。
この焙煎によって実現したのは、
・クリアな飲み心地
・やわらかな口当たり
・毎日飲みたくなるやさしさ
2025年1月からネット限定で販売開始以来、
その価値をご理解いただいたお客様へお届けしています。
第3段階

疑似スチーム焙煎
師匠から受け継いだ「長時間低温焙煎」、身体への優しさを
追求して生まれた「50℃洗い&スチーム焙煎」。
そのどちらも、私たちにとって大切な財産です。
疑似スチーム焙煎の開発が本格的に始まったきっかけは、
2025年に初めて挑戦した焙煎競技会でした。
競技会では、豆が持つ個性をどこまで明確に引き出せるかが問われます。しかしその挑戦を通して、私たちはひとつの
課題に直面しました。
50℃洗い&スチーム焙煎は、身体へのやさしさや
飲み心地の面で大きな価値を持つ一方、競技で求められる
繊細な個性表現には、すこし通用しにくかったのです。
そのため、限られた期間の中で競技用プロファイルを一から開発することとしました。
結果として初参加ながら一定の評価をいただくことが
できましたが、私自身の中には強い悔しさが残りました。
「もっとできたはず」
その思いが、新たな探求の出発点になりました。
そこで私たちが目指したのは、
豆の個性をしっかり表現しながら、日本人の味覚に自然になじむコーヒー
そして、
高価な器具や特別な技術がなくても、ご家庭でお店の味に近づけやすい再現性を両立する新たな焙煎メソッドでした。
ただし、それは50℃洗い&スチーム焙煎を否定するものではありません。むしろ、その思想をさらに発展させ、
矛盾なく共存できる形で進化させたいと考えました。
そうして生まれたのが、現在も進化を続ける
疑似スチーム焙煎です。
熱の伝え方、排気のバランス、豆内部への火の入り方。
細かな条件を何度も見直しながら、試作を重ね、少しずつ完成度を高めてきました。
そして2026年の初めからは、店頭でのテスト販売を開始。
実際にお客様へお届けしながら、味わいの印象やご家庭での再現性を検証し、さらに細かな調整を重ねています。
現在は、ネット販売開始に向けた準備も進めています。
販売開始の際は、公式ホームページやSNSにてお知らせいたします。
また、この技術は通常の生豆だけでなく、50℃洗いを施した生豆にも応用されています。
現在、当店のコーヒーは2つのラインに分かれています。
疑似スチーム焙煎
産地ごとの個性やテロワールを、より鮮やかに楽しんでいただくためのライン
50℃洗い焙煎
より安全性とやさしい飲み心地にこだわったライン
それぞれ異なる魅力を持ちながら、どちらも「日本人に
とって自然に美味しい一杯」を目指して生まれました。
私たちは、この焙煎をまだ完成形だとは考えていません。
よりクリアに。
より豊かに。
より産地の物語が伝わる一杯へ。
疑似スチーム焙煎は、今も進化を続けています。
私たちは、完成を宣言しません
コーヒーには、まだ引き出せる可能性があります。
よりクリアに。
より豊かに。
より産地の物語が伝わる一杯へ。
今日も一釜ずつ、検証を重ねています。
私たちが届けたいもの

私たちが届けたいのは、
ただ美味しいコーヒーではありません。
その一杯から、
その豆が育った土地の空気
その土地の風土
生産者の挑戦
まで感じていただけること。
産地のテロワールや生産者のストーリーを感じることの
できる美味しいコーヒー。
それが、私たちの目指す焙煎です。
